生活を重視する思想 4
困ったベートーベン祭実行委員会のスタッフがわたしたちのところへやってきて、急遽「第九」をやってくれ、とうことになり、練習する時間がないので、直ちにオーケストラといっしょのゲネプロをやることになりました。
そんな事情で、はじめての人は遠慮してもらいたいということになって、「第九」合唱の経験が問われて驚きました。
10回、20回、中には40回という猛者がいたのです。
それはまさに「合唱の虫」でした。
私は今でも、会社で合唱団に属していますが、興銀の合唱団の場合も、ある程度の年齢になると卒業してしまい、独身生活と別れるとともに、合唱とも疎遠になってしまうのが大半です。
しかし、西ドイツでの体験は、日本の現実ともだいぶかけはなれたものでした。
ゲネプロで音合わせをしても、一発でOK、声が前に出ます。
これは合唱の基盤が全く違うと思ったものでした。
しかもそれがプロの技ではない点に、ドイツ人の文化水準の核心を垣間みた、忘れられない体験でした。
個人生活の豊かさというのは、西ドイツに限ったことではないですが、ヨーロッパ、アメリカにあって、日本にないものです。